磐梯山
2005.1.29
前日金曜日午後からの好天が持ちそうだった土曜。
今シーズン中に一度はと考えていた磐梯山へ。
同行abe君。
猪苗代スキー場のリフト運転開始時刻8:30に合わせて5:30仙台発。
R4を南下,土湯峠越えで猪苗代スキー場(ミネロ)着はちょうど運転開始時刻前。
このスキー場,首都圏の客も多いせいか設備が整っていて快適。
駐車場の誘導員もいっぱいいて動きもテキパキ。随分人件費がかかっているようにも見えるが,駐車料金無料なのには恐れ入った。
チケット売り場でゲレンデトップまでのリフト2回分(400円×2,ちと高い)を購入し,クワッド,ペアと乗り継いでゲレンデトップへ。
この時点で既にボードとスキーの先行者がハイクアップし始めているのが見えた。いいお天気だからね。
ゲレンデトップは見晴らし抜群。
快晴無風でもう既に暑い。
今朝方は猛烈に冷え込んだが,予報どおり陽が上がってくるとぐんぐん気温が上昇しているようだ。上着を脱ぎ,腕まくりをして出発。
9:00
ゲレンデトップ出発
(1255)
赤埴山山頂方面にややトラバース気味に尾根を目指すが,とにかく雪は既にグサグサで,スノーシューの爪にたちまち団子状に雪の塊ができてやたら歩きにくい。
少々の林とヤブを抜けて尾根に取り付くと,磐梯山の全容が見えてくる。
おお〜…すごい迫力だ,東壁。
この先沼ノ平までは,いくつかのスキーヤーのサイトでは赤埴山はトラバースするより山頂を越えた方が良い旨の記述があったので,そのとおりに。
途中先行していたパーティーに追いつくと,その中のお一人は昨年の七横映画祭でお会いしぱぐった郡山のSさんでありました。
9:40
赤埴山山頂
(1430)
間もなく赤埴山山頂へ。
ここからは磐梯山東壁から沼ノ平,北に櫛ヶ峰の展望が抜群である。
シャッターを切りまくった後,沼ノ平への尾根の下降。
鏡沼の西岸を辿って,磐梯山から東に延びる支尾根に取り付く。
abe君は東壁左肩のラインを,ワタクシは右肩のラインを狙っているが,要所で雪面や地形を見極め,まずいようなら山頂を越えて右肩へ。
それもダメならさらに降ったなだらかな面まで行くことにした。
前出のパーティーは沼ノ平から東壁直下をつめる模様。
細い尾根を,ところどころ発達した雪庇やヤブを避けながら,くるぶし上程度のラッセル。
日射の強い尾根の左(南)側はどこまで登ってもグサグサで,こまめに団子を落とさないとずるずる滑ってしょうがない。
わりとイイ斜度なので一歩一歩しっかり雪面に足を蹴りこんでいく。
上がっていくほどに細くなる尾根は,南側こそ斜面であるが,東壁側はほぼ崖。
相当な高度感にちりちりする。
尾根の南側の沢も滑降の候補であったため,コチラの観察もしながらのハイクアップ。
しかしこちら側も上部の斜度はかなりのものだ。
ヤセ尾根がさらに険しくなってきたところでスノーシューを脱ぎ,つぼ足に切り替える。
これでだいぶ足元が安定したが,ところどころ落し穴にはまるのがネックだ。
やがて尾根は南東に延びる尾根に吸収されるが,この尾根に取り付く急斜面が最難関。
潅木もほとんど無くなるこのあたりは,右側にabe君の狙っていた面がスパッと切れ落ちているし,登っている斜面自体もあまり後ろを振り返りたくない斜度。
一歩一歩をしっかり確保しながら這い上がるように登る。
11:45
東壁左肩
(約1730)
さて,東壁左肩のラインの上に立ったわけだが…。
「abe君,どうする?」
「…」
その斜度のきつさに腰が引けるが,面自体はフラットで広い。
ところが,下部の沼ノ平へ抜ける直前が漏斗状に狭まって,おまけにその先が見えない。
とりあえずここはパス。
共に山頂を目指してハイクアップ続行。
ここから先もわりと急ではあるが雪が締まっていて先ほどよりはマシである。
磐梯山南面の様子は,南西に猪苗代リゾートスキー場方面へ延びる沢が広くて良さそうにも見えるが,雪面はかなり固いだろう。
さらに一登りで山頂へ。
12:10
山頂
(1818.6)
鋭鋒の山頂は無雪期にも増して怖く,東壁を覗き込むのも容易でない。
当然ここから降りるなんて論外。
とりあえず360度の眺望を肴にメシだ!(?)
山頂東側眼下に広がる沼ノ平までは標高差にして400mあまり。
壁越しに見下ろすとかなりの高度感だ。
休憩後北に延びる尾根に沿って高度を下げ,当初考えていた東壁右肩に向かう。
途中,ところどころで壁側を覗き込むが,崖しか見えない^^;
12:50
東壁右肩
(約1730)
お目当てのポイントにたどり着いて斜面を覗き込むと,崖というほどではないが,それでも充分躊躇する斜度。
下部の大斜面に至るまで斜面が連続しているのは確認済みだが,ここから視認はできない。
積雪自体あまり多くないため,降りるルートがかなり限定される状態。
ともかく積雪の状態を見てみるが,想像以上にしっかりしていて,あとは決心のみ。
結局abe君はもう一段下がったポイントから,ワタクシは予定通りここからドロップすることに決定し,支度を始める。
支度を整えている最中も,焦燥感で心臓がバクバク,息が弾んでしょうがない。
支度を整え,板を履いて斜面の上へ立つ。
…スタートできない。
するきっかけがない。
誰かにGOサインを出してもらわないと動けない^^;
しばらく滑走ラインをイメージしたり深呼吸したり目を閉じてみたり…ダメだ,踏み出せない。
いっそ体をゆすって準備運動してたら滑り出しちゃったって設定で行くか?なんて考えてみるが,故意にできるはずもなく…。
これじゃらちが明かない。
あまり思い込まずに入っていくことにしよう。
そう,出かけるときに普通に玄関の扉を開くように…。
頭を空にしてまったく気合も入れずに,すっ,とドロップ。
ぅわっ,入っちまった!と思う間もなく,雪がかなりしっかりしていることが改めてわかって恐怖心が消え,バックサイドのターン。
これがわりと調子よく,つづけてフロントサイドのターンに入ったところで,思いがけず板の先端が雪に刺さった。
なんとか踏ん張って持ちこたえ,やりたくは無かったが下部斜面が見える位置までじりじりとトラバース。
下部へつながる通路が見えたところで,バックサイドのターンは柔らかい粉の感触。
つづけてフロントサイドのターンに入ったところで,またしてもグサグサっと刺さり,これがこらえきれずに転倒…ゲレンデなら止まるまでしょうがねーやとなすがままの状況も,ここでは絶対に許されねーと渾身のリカバリー。
なんとか体勢を立て直して岩の狭間を過ぎ,下部大斜面へ出ると逃げるように滑り降りた…。
岩の狭間から下は滑って最高に楽しい部類の斜面ではあったが,頭に血が上っている状態ではほとんど楽しむ余裕などなかった。
すり鉢状の上部斜面は,右岸側が粉であったが,日照の時間が長かった左岸側の雪が完全に腐っていて,左右のターンでまったく雪質が異なっていたのだった。
あの斜度でリカバリーできたのは幸運だったというほか無い。精神的にイタイ経験だった。
オープンバーン下部に達してすっかり脱力。
少しして,一段下がった位置からabe君,ドロップ。
上部の岩の狭間を慎重にパスして大斜面へ。
無事にコチラまで達すると,お互い顔を見合わせて苦笑。
気持ちを落ち着けるためにしばらくの休憩。
降りてきた(落ちてきた?)東壁を見上げながら考えた。
いったい山ボードに何を求めているんだろう?手に汗握る緊張感か?冒険心か?一番にドロップしたくて仕方ないわくわくする斜面じゃなかったのか?吐き気をもよおすほどの極度の緊張感を味わって何かを得られたのか?…すごいのを降りてきたって事実は残ったが,滑りが楽しくて嬉しくて…,っていうのとはおよそかけ離れた世界だった(んでも,もっと雪がついてれば或いは…なんつって)。
やっぱり,きゃーきゃー言える斜面がイイ
13:55
沼ノ平南端
(約1390)
その後,緩い林間を滑って沼ノ平へ。
雪原をてくてく歩いて南端にたどり着き,東壁を振り返りながら改めて休憩。
やっと吐き気が無くなってきた。
熱いお茶とパンで一息。
ここ,沼ノ平は無雪期に来たときも思ったが,やっぱり楽園だ(好天なら)。
気持ちも落ち着いたところで沼ノ平をあとにし,赤埴山への登り返し。
この頃から上空に雲が広がり,振り返ると磐梯山の山頂付近が隠れてきた。
赤埴山を越え,登りでは雪のない尾根上を歩いてきたが,尾根東側に雪がつながっていたので,板を履いてトラバース。
ミネロから上がってきたトレースから下降を始め,林,ヤブを抜けてゲレンデトップへ。
14:45
ゲレンデトップ
(1255)
スキー場ベースの山行ではほとんどの場合ゲレンデを滑って下山となるのがイタイところ。
へろへろの体に赤埴のコブ斜面は弱り目に祟り目,泣きっ面に蜂(笑)。
ピステのかけてあった西側のコースに入ったが,時間も時間で多少のうねりは避けられない。疲れたわ〜。
下部ミネロイーストコースは延々フラットで且つ緩くて助かった。
帰りに10年ぶりぐらいに飯坂温泉の共同浴場,鯖湖湯(100円)へ。
激熱であるが,湯屋の雰囲気満点。癒された〜。