湯殿山・仙人岳
2008.3.22
どっか山イキテーというKORO4をそそのかして湯殿山北西に派生する仙人岳へ。
湯殿山の北西には,この仙人岳と薬師岳のいずれもほぼ同等の標高の似通ったお山が並んでいて,椅子に例えれば湯殿山が背もたれ,二つのお山がそれぞれ左右のひじ掛けで,座面に当たる三山の内側はスリークオーターの壮大なボウルになっているわけです。
切れたら逃げ場は無いと思ったほうが良い。
2005年に初めて湯殿の稜線を歩いた際に,眼下につるんとした仙人岳の北東面を見て以来,いつか行きたいナ〜と漠然と考えてたところにKORO4からのお誘い。
あまり多くは語らずにこのお山をぶつけてみたら,んでは行ってみるすか,と。
アプローチはR112を湯殿山神社方面へ折れて除雪終点の湯殿山ホテル。
仙人岳-湯殿山の尾根北東面の条件良さげなラインを滑走予定で,ザラメが緩む頃合を見計らって遅めの出発。
ただ,一つ懸念材料は,湯殿から見下ろした際のその尾根,実は東側に全く雪庇が無かった。もし西側に出てて越えられそうになければ,おとなしく登った西面を滑って戻ろう。
9:45
湯殿山ホテル
(745)
快晴無風。4日前の栗駒で冬用ファーストレイヤー1枚でも暑かった経験を生かし,夏用ファーストレイヤー1枚のみ。さすがにさわやかだわ。ってまだ3月なんすけど。
旧R112から雪上に上がり,ほぼまっすぐ東へ。
湯殿山神社への道路は本格的に除雪が始まったばかりで,途中かすめる道路にはバックホーか何かのキャタピラ跡がついているのみ。
その道路東側のオープンバーンの状態を見ながら上げたが,陽が入り始めたばかりの西面はまだガチガチ。
ただし陽射しは容赦なく,無風と相まって汗たらたら。
夏用の服なんでこれ以上脱ぎよう無い。
一段上げて小休止。昨年参篭所から落とした際におおよそ地形は把握していたし,目標もバッチリ見えてんので,以降適当に歩きやすい地形を選んで疎林をハイクアップ。
滑りでは好都合の疎林も登りでは陽射しダイレクト。痛し痒し。
時折りそよそよと吹く微風がタイヘンありがたい。
徐々に斜度が上がり,一段落すると仙人岳直下へ。
このとんがり山のほとんどの面はスラフが流れている。
直下の沢状を避けて南東に進路をとり,さらにもう一段の急登。
これをこなすと湯殿山本峰方面に仙人岳-湯殿山の尾根が見えてきた。
んで,本日のハイクアップの核心は,懸念していた通りこちら側(西側)に雪庇が発達。どんな風の吹き方だよ。
11:25
尾根下
(約1120)
雪庇の切れ目はないもんかと横移動で観察。
結果,最低鞍部付近と,尾根が湯殿に吸収されるあたりがなんとかやれそうかしら?
んでは前者で行くかとKORO4。
一人ずつネとアタック開始。
がつがつと快調に上げるKORO4,下から見上げてたら陽射しのまぶしさも手伝ってなんだかクラクラ。斜度も限りなく垂直に見えてきた。
「大丈夫かぁ?」と尋ねたら,なんとかなんでね,と。
上部雪面はぐさぐさの様でがっくりペースダウン。尾根に這い上がる直前で大苦戦の模様。
しばらく格闘の末,よっこらせと尾根の上に消えたと思ったら悲鳴が聞こえる。よっぽど素晴らしいか,恐ろしい目にあってんだろな。
こちらもアタック開始。
斜面2/3ほどは快調に上げたが,上部はKORO4のステップ利用もずるずるとルーズ。よくこんなの上げたなぁとさらにステップをけり込んで慎重に上げる。
ちらと横を見るとかなりの斜度と高度感。
機材を詰め込んだザックがやけに重く,背後から引き倒されそうな感覚が恐怖。
尾根直下まで上げると,最後のひと踏ん張り分は分厚いスラブ。垂直に近い壁にへばりついてるのがやっとの状態で呼吸を整える。つうか腹にも1台カメラを仕込んでるせいで充分にへばりつけてないんだけど,今となっては如何ともし難い。
KORO4の切ったステップは落差が大きい。
イチかバチかで上げようとして後ろにひっくり返ったらお終いだ。少し小さめにステップを切りなおし,手を雪にがつがつ突き刺して(幸い刺さる)手がかりを作り,慎重に体を押し上げる。
一つのミスで即終了てのはホンットに恐怖だ。
尾根上のKORO4に邪魔なポールと落し物を渡して,最後の一這いずりで尾根上に…。
12:15
尾根上
(約1200)
とてつもない恐怖と安堵でしばらく這いつくばったまま荒い呼吸を整える。
東側の壮大なボウルの眺めを楽しむ余裕はまだ無く,まずこのヤセ尾根から移動したかった。
呼吸が落ち着いたところで,生まれたての小鹿のような足取りで仙人岳へ移動。
仙人岳直下
(約1210)
滑走予定の仙人岳北東面はボトムまでフラットにつながっている。
尾根直下は視認不可。
仙人岳側,やや尾根が広がったところで大休止。
スキル越えた登りやってしまった,二度と来ねー。とKORO4。ホントにアイゼン+ダブルアックスの世界。守備範囲外だった。
ただ,ここも安心できる場所ではないし,仙人岳東面に入ったクラックにスラフが流れ込む音と光景にギクッとしたりで,なんだかまったく落ち着かない。
さっさとメシを済ませてドロップする。
ラインは尾根上から視認できた仙人岳北東面のみとし,先に落とさせてもらうことに。
未だに恐怖心の抜け切らない状態で落とし始めると,ほんの少し落としたところで北東面全体が視認でき,且つフラットであったことで,急にテンション上がり。
KORO4に一声かけ,尾根下バーンにトラバース。
まだ少しビビリが入って慎重にターンを刻んでたら,あれれ?なんだかこの雪,調子いいぞ。
もっと縦にしても良さげかもと落とし始めれば,ストレスフリーな快適柔らかザラメに昇天。
あっという間にボトムへ。
惜しむらくは良さに気付いたのが下1/3だったこと。つい先ほどまでの恐怖心は忘却の彼方。
続いてKORO4。
上部こそ慎重だったが,後半スイッチが入った様子でボトムへ。
13:20
仙人岳北東面ボトム
(約1060)
登りはともかく,滑りは抜群に良かった点でやってみた甲斐はあったかな。
一息ついて出発。
ところどころデブリ(プレハブ小屋クラスのブロックもある)の堆積する仙人岳と薬師岳の巨大なゲートを通って湯殿山参篭所へ。
13:40
湯殿山参篭所
(約930)
参篭所先から仙人岳西側を巻いて少々ハイクアップ。
14:20
仙人岳西面
(約1000)
2本ほど尾根を越えたところで西にトラバース気味に滑り出すと登ってきた斜面へ。
以下,広くて滑りやすい疎林をゆるゆる落とす。
最後のお楽しみゲレンデを落とした後の緩斜面はねっぱった。
登りのスキルを上げない限り,次は無いなぁ。
14:50
湯殿山ホテル
(745)