湯殿山

2006.3.4

日本海側もお天気が良さげだったんで,およそ11ヶ月ぶりに月山エリアへ。

姥にすっか湯殿にすっか石跳川をさかのぼりながら考えることにして,未明4時ごろ仙台出発。

夜空には星,道路は峠道でもドライで出遅れた感もあったが,西川に入る頃にはナント雪,雪。こんこんと降っている。

こりゃ早く行っても意味無かったなとちょっと安堵。

予想気圧配置によればこの雪もじきに止むに違いないと,圧雪の道路を志津に向かって上がっていく。

到着した志津の除雪終点には先客1台。

単独のスノーシューの登山者が支度中。オハヨーゴザイマース!明るいお方。

んで,降り止まぬ雪のなか支度してると1台車が上がってきた。

単独のボードの方で,でかいザックにボレーのスプリット。

ボレーのスプリット

聞けば,同じ仙台からのようで,姥沢に幕営して二日間やるんだそう。

詳しくは省くが単独で山ボードやってる理由に共感しちゃったな〜。

そんな話をしていたら青空がのぞき始めた。

6:40

志津出発

(約730)

到着順に各々出発。

未だお山は雪雲の中だが,じきにとれるだろ!と念じて雪の上に這い上がる。

姥沢への分岐までは多数の往来のおかげでしっかり踏み固められ,その上にさらっとしたのが10センチほど乗っている状態。

分岐の道路標識前には,ndanassuさんの雪だるまと思しき雪の塊がたたずんでいた。

帰りにちょしてこう。

分岐を過ぎると,トレースはすべて月山荘方面へ。

ネイチャーセンター方面へ向かうためトレースをそれると,予想外のひざ下ラッセル開始。しかもなんだかとってもエアリー。3月じゃなかったっけ?

ネイチャーセンター手前まで明るい兆しを見せていた空は,次第に雪雲に覆われる。

ネイチャーセンターを過ぎる頃にはラッセルはひざ〜ひざ上に。

まったくトレースの無い石跳の緩くて長いこと。こりゃお帰りもシューだな。

しっかり締まった雪を想像していたので,一日で湯殿も姥もと楽観していたが,こりゃ両方なんてとても無理,未だ東側をやれてない湯殿に絞って石跳右岸へ上がる。

8:00

石跳右岸へ

(約860)

わっせわっせとブナ林に突入。

時折雲間から顔をのぞかせる太陽が期待を抱かせるも空模様は相変わらず。

対岸の姥も白く霞んでいる。

徐々に斜度が上がり始めると,ブナの疎林は魅惑のゲレンデとなる。

ここを今滑らないことを後悔するような気がしてならないが,目的は東斜面。先を急いでとにかくラッセル。

8:35

小休止

(約1010)

途中燃料切れにつきブナに身を寄せるようにして休憩,パンを食らう。

そこから対岸に見える姥の景色が素晴らしい。に違いない。晴れてれば。

姥ヶ岳を望む

腹を満たして力が湧いてきたところでクソラッセル再開。

緩く長い疎林のラッセルは,気のせいか上げていくほどに雪の重さが感じられ始める。

気温,上がっているのか?

疎林が切れかかる頃,いつか見た真っ白な尾根が視界に入ってくる。そしてその先には尾根と判別しがたいほどの真っ白な空。

森林限界上の尾根が見えてきた

9:50

森林限界

(約1200)

森林限界上に出ると,もう間もなくその明瞭な尾根。

その尾根に取り付いてしまえば,このラッセルも浅くなるに違いない。

そう言い聞かせながら,すっかり重くなった足を引きずるように前に運ぶ。

その重さは長いラッセルによる疲労ばかりでなく,雪質の変化によるところが大きいのも間違いなさそう。

無心にラッセルを続けてふと辺りを見回すと,風はぱったりと止み,右も左も真っ白で雪面と空の境は判然とせず,目指していた尾根すらその存在を隠してしまっている。

えも言われぬ状況に,ふいに自分の居場所があやしく感じられ,はっと後方を振り返ると…いや,大丈夫,ラッセルしてきた自分のトレースと下方にうっすらとブナ林が見えた。ちゃんとここに居る(汗

ひと呼吸おいて再び尾根を目指す。

なんとなくそれらしいスカイラインが見えてくると,間もなく尾根上へ。

ん〜まったくなんも見えね。

尾根の先に広がる湯殿山の東斜面は真っ白なベールに包まれ,右も左もないまったく無垢な世界。

そもそもがまったく木立の無い山であるところに雪とガスで,空も雪面もすべてが同化していた。

予想気圧配置よガッカリさせてくれるな,と,ささやかな期待を胸にさらに尾根をつめるが,未だラッセルはひざで,まったく効率は上がらない。

期待していた斜面はおろか,今立っている尾根の二歩先すら見えない状況に,どんな形で発達しているかもわからない雪庇を踏み抜く危険を感じて,これ以上の登高を断念。

この状況では滑りすらままならないだろう。

10:20

ドロップ

(約1350)

自分のトレースを頼りに尾根のとりつきまで落とし,同様に尾根の南側を林まで一気に落とす。

ここまでがメチャクチャ気持ちいがった。

スワローテール冥利だったよな気がする。

と,そこには赤と緑のウェアの二人組みのボーダーが。

coba&マコリンの七横ペアかと思ったわい

東側やっぺと思ったんすけどさっぱ見えねくて尾根からすぐ降りてきたんですよ,と,やけくそ気味に笑いながら話したら,「東側クラック入ってたからね〜」と地元の方のよう。

「魅力的なトレースがあったんで…」と喜んでいただいた。少し報われたような気がする。

ん〜しかしこんなコンディションではファーストよりゃセカンドの方がいいな。雪面見えっから。

お二人とお別れして,とりあえず石跳までお楽しみの沢。

広い沢の両岸には植生があるのでスピード感がつかみやすい。

って,深くて重い雪に全然板が走らない。

もっと斜度をくれー。

ほぼ直滑降,な感じで石跳に落っこちて終了。

10:45

石跳川

(約1020)

当然石跳下りは滑るはずもなく,シューに履き替えて長い長い降りラッセルの始まり。

石跳のブナ

ラッセルは相変わらずで,雪はその重さをさらに増しているが,降りであることが負担を軽くしてくれる。

ま,ブナを愛でながら石跳をゆっくり歩いて下る千載一遇の好機と考えれば,つって。

とにかく無風で木々のざわめきも無いまったくの無音。

時折聴こえる鳥のさえずりの他に音を立てるのは自分だけ。

身じろぎもせずにしばらく立ち尽くしていたら…静寂って貴重だな〜(センチメンタル)。

そして立派なブナの巨木の多いことね。

こいなのの撮り方がわがんねわ。

地道にラッセルを稼いでいると,やっと登りのトレースに合流してスピードアップ。

ネイチャーセンターへ

12:10

ネイチャーセンター

(約800)

にわかに風が出てきて日が差し始めたネイチャーセンター前には,朝には無かったビニールテープの柵が張られていた。入っちゃダメってことかしら?

またまた腹が減ってきたのでメシ。

よいしょっと雪の上に腰を下ろしてパンにかぶりつきながら湯殿方面を振り返ると…むむ,お山の稜線が。

ネイチャーセンターよりお山を振り返る

見なかったことにして休憩を切り上げ,さくさく下山。

姥沢への分岐にて偶然出会ったK2 POACHERのダンナとヨメ,のダンナさんと一緒に雪だるまをいじくりまわした後,志津到着。

13:30

志津

(約730)

これまた偶然出会ったオジョー&あかねずみのシッポ隊を見送った後,見ちゃイカンと思いつつ振り返り見た湯殿は快晴であった。

志津のあかねずみご一行様