南屏風岳
2005.1.23
等圧線の間隔も広がってきた日曜。
気圧の谷の影響で薄い雲が広がる予報であったが大崩れはするまいと,前日の予告どおり南屏風へ。
白石スキー場からのアプローチとし,不忘山を経由。
積雪の状態次第では引き返して不忘山の東斜面でいいべぐらいの気持ちで。
朝のうちは不忘から屏風にかけて上部がガスに覆われていて,こりゃ不忘山ピストンで終わりかな…な感じ?
スキー場に到着してゲレンデトップまでのリフト2本分,1回券2枚(350円×2)購入。
間もなくリフト運行開始時刻8:30を迎えたが,一向に動く気配がない。
見ていたらナント今から乗り場の除雪が始まり,しばらくお待ちくださいのアナウンス…むむ。
南側のリフトは動き始めたが,過去の不忘山の経験から,北側のリフトが尾根に近くて(ヤブは濃いが),登りには好ましく思っていたので,もう少々待つことにした。
…もう少々…もう少々,暖かなレストハウスで舟をこぎこぎ待つこと小一時間。
やっと動き始めたリフトに乗っかってゲレンデトップへ。
9:35
ゲレンデトップ
(約1140)
前日の踏みあとがあると思いきやまったくゼロ。
ヤブの中,膝ラッセル開始。
やっぱ濃いわ…。
徐々にヤブが途切れてくると,眼前に現れた不忘山。
ガスがだいぶ上がってほとんど山頂まで見通せる。
尾根に向かってひたすらラッセルを続けるが,帯状のヤブがたびたび行く手を遮り,背負った板をぐいと枝につかまれて,うんうんうめきながらのろのろ前進。
はぁ〜不忘山すら登頂が危ういな…いやいや,最近気持ちが弱くてイカン。今日は時間もあるし,最低でも不忘山,である。
時折り腿まで沈むラッセルになんだっつーの!と,いちいちぼやきを入れながらようやく尾根にとりつく。
過去の山行では固く締まって歩きやすかったこの尾根。
なんとフカフカなうえ,未だヤブだらけ(汗)の大誤算。
しかし敗退する気はさらさらない。
時折り北方に見え隠れする水引の尾根を眺めながら気合のラッセル。
山頂方面を見上げると,たくさんのスキーヤーが上がっていくのが見えた…これは失敗!ほとんどが南側のリフトからアプローチしているらしい。あやかりたかった…。
徐々にヤブが薄くなってくるとラッセルも浅くなり,吹きさらしの尾根になるとほとんど沈まずスピードアップ。
北には屏風岳も望め,当初の目的の南屏風岳への意欲も復活。
山頂手前の小ピークではたくさんのスキーヤーが滑降の準備中。
ヤブ濃くて雪の豊富なとこをよく上がってきたなと慰めていただいた(笑)。
次回は南側リフトからにいたします。
ここから山頂まではガレたヤセ尾根の急坂。
すっかり青空となった南屏風方面の見晴らしも良く,一人二人南屏風に向かう影が視認できる。
11:55
不忘山頂
(1705.3)
ひと登りで山頂に立つと,ここにもたくさんのスキーヤー。
先ほどの皆さんもそうであったが,ケツの割れた板に注目が集まる。
「これはなんで先が割れてんの?」
「いや,これはケツのほうで…」
と,粉板の説明にいそしむ。
「山岳用なんだ!?」
「そんなとこです^^;」
不忘から屏風にかけて連なる東側の斜面は,まったくつるんとしたデカイ面がいっぱい。
沢に吸い込まれるすり鉢状の地形は下部に行くほど深くなり,その美しく険しい景色にしばし見入る。
話は変わってスキーヤーの皆さん,南屏風稜線上を歩くスキーヤーを見て,
「縦走すんのかな?でも時間的に遅いな〜」
とおっしゃっていたが,つーことは屏風の壁が目的?
ここでお会いしたスキーヤーはみな,不忘山のピストンのようで,ここから先は再び一人旅。
不忘からの下りが意外に険しく,左右がすっぱり切れ落ちているので結構気を使った。
スノーシューなら後ろ向き,あるいはつぼ足の方が良いだろう。
南屏風手前の1732峰まではヤセ尾根を通過。
時折り強い風が吹きぬけ,斜面を駆け上がってきた雪が頬を打つ。イテテ。フードを深くかぶってこれをやり過ごす。
ま,奥羽山脈の稜線上であることを考えれば,そよ風のうちだろう。
このあたりから見る屏風の壁は,山の東側から見て思うほど絶壁ではないようだ。
1732峰を越えると徐々に稜線は広くなり,ひと登りで南屏風岳山頂へ。
12:35
南屏風岳山頂
(1810)
とにかくお天気さまさま。
山形側は雲海の下であるが,北北西に連なる蔵王連峰,芝草平の樹氷原。
足元には,東に水引入道からこちらの南屏風,南東の不忘山へと,コガ沢をぐるっと取り囲む屏風の壁が圧巻。
冬季にここへ立てたことがまず嬉しくて,アホかと思うくらいシャッターを切りまくる。
ぱたと風も止んで超おだやか。
壁の上をやや北に進んだところに二人のスキーヤーが確認できた。
下をうかがっている様子。ドロップするとこかな?
ちょうど山頂のすぐ東側付近にフラットな面が広がり,雪庇がなくて入り易そうに見えたが,下部の地形が思いのほか深く,コガ沢に達する手前の様子が確認できないため,ここは見送ることにした。
崖になっていたら困る^^;
壁の下部の様子をうかがいながら,少しずつ北に移動していたら,前出のスキーヤー,雪庇の切れているところから慎重にドロップ。
おお〜入ってった入ってった!
すぐに明瞭な尾根の陰に入り,こちら側から見えなくなったが,しばらくして下部コガ沢に達した模様。
ドロップポイントを探してうろうろしている隙に,もう一人も無事に下部へ達したようだ。
ポイントを物色した結果,スキーヤーの入ったポイントより尾根ひとつ南側の雪庇の切れているポイントから入ることに決定。
初めてのお山で,且つヤバい斜面にもかかわらず,不思議とドキドキせず淡々と準備を進める。
先に二人も入っている安心感があるのかもしれない(←良くない傾向だ)。
ボトムのスキーヤー二人に動きがない。
恐らくコチラの滑りを見守るんだろう。
それではお待たせしませんよ。
12:55
ドロップ
はじめの数メートルこそやや固かったが,すぐに粉の深さが増してくる。
ターン二つほどで,ぶちぶちぶちっと体中の何かがぶち切れて全身の血が煮えたぎるような感覚に支配されると,そこから先は地形と斜度と粉の抵抗が紡ぎだす快楽に溺れ,奈落の底へ…。
太陽の角度の関係で,後方に舞い上がるスプレーの影が大きく行く手に盛り上がっていくのを見ながら,ちょっと暴走気味にいくつかターンしていくうちに,斜面のスケールをつかめていなかったことに気づく。
右からせり出した尾根まで2ターン,その左の沢まで3ターンと,上からイメージしていたスケールは,実際滑ってみるともっとデカいものだった。嬉しい誤算。
斜面中間部よりやや下で落ち込んでいる部分を避けて,左に一本尾根を越え,スキーヤーのトラックに合流。
このあたりから地形が深くなり,コンニャロ,コンニャロて感じで当て込んで,スキーヤーのいるボトム到達…完全燃焼だった。
12:57
コガ沢
(約1420)
もうとにかく,いてもたってもいられず腹の底から絶叫したくて仕方なかったが,初対面の人がいるのでガマンした^^;
どうも〜,とご挨拶。
「安定してて良かったすねー。」
と話しかけたら,
「はじめのほうのターンで右側雪崩れてたよ。」
桑原桑原^^;
この方々は何度か屏風に入っていらっしゃるそう。エキスパート。この時期にはなかなか入れないとおっしゃっていた。
お二人を見送り,しばらく壁を見上げながらメシ!安心感と充実感で腹が減ってきた。砂糖たっぷりの熱々紅茶がぬくい。
改めて周りを見渡すと良さそうなラインがいっぱい。
ああでも,すべてが雪崩れるためにあるような地形ばっかだ(←重要)。
13:10
コガ沢滑降開始
はじめのうち,わりと広かった沢も,どんどん深く狭くなっていく。
階段状に高度を落としていく地形は,すべてが雪で埋まっていればスリリングなジェットコースターであるが,間もなく沢が割れている箇所が出てくる。
先が落ち込んだ見えないところは間違っても沢底を滑ってはイケナイ。
13:25
登り返し地点
(約1260)
ポール推進を交えながら深い沢を進んでいくと,先ほどのお二人に追いついた。
シールをつけてるようなので聞くと,ここから先,結構な落差の滝が二つほどあるらしく,ここから不忘山側の斜面をトラバースしてスキー場に滑り込むんだそう。
なるほど,経験者には従おう。
それにしてもすでに深い谷。崖のような斜面をラッセルして上がるところから始まるのか…。
急いでスノーシューに履き替え,「ラッセル交代しますよ!」と追いかけたものの,まったくスキーのラッセルには追いつけず,逆に離されていくばかりであった。
沢から這い上がって長いトラバースに入っても差を縮めることはかなわず,途中足がけいれんしてしばらく休憩(無念)。
いくつか尾根を越えたところで,休憩中のお二人にやっと追いつき,んではここから先はワタクシがと先行しようとしたら,「休んだらいいっちゃ!」とやさしいお言葉…ご恩は忘れません。
14:45
スキー場上の緩斜面
(約1240?)
休憩後,少しの登りで不忘山東斜面に出た。
結局ここまですべて先行していただき,コチラとしては申し訳ない反面,助かった〜。
ちなみにこのトラバース,スキー場の中間に出る登山道かと思いきや,スキー場のさらに上の緩い斜面に出た。
ここから先は登って来た北側のリフトを目指すとヤブが濃くてしょうがないので,ポール両手にヤブの薄い南側リフト方面を目指すことにした。
お二人とは結局ここでお別れ。
ちなみにお一人はsakanoさんという方で,実はこの方のホームページ「東北アルパインスキー日誌」は,ワタクシ,何度か拝見したことがあったのでした。世の中狭い。
15:05
ゲレンデトップ
(約1120)
少々のヤブを越えて南側のリフトにはわりとスンナリ滑りこむことができた。
ゲレンデを滑り降りた頃には足腰がへろへろであったが,壁の滑りを思い出すたび無性に叫びたくなるのと走り回りたくなるので困った(笑)。あぁ〜でも生きて帰ってきたな。
北屏風が待っている(今シーズンかどうかはワカリマセンヨ)。