北股岳・石転び沢

2004.5.8

いつか行かねばと構想をふくらませていた飯豊は屈指の雪渓と言われる石転び沢。

雪どけの早い今シーズン,全層は落ち着いてきたかな?いまだ怖い時期ではあるが,とにかく行ってみよう。

同行はtoco氏,abe君。

米沢のちょっと先でしょ!って感覚のせいで,あんまり早起きしなかったけれど,やっぱ遠かった…もはや新潟県だもんね。ゆっくり目に現地入り。

8:45

飯豊山荘先駐車場出発

飯豊山荘先のゲート前駐車場にとめて準備。

気温は高く,初めからTシャツ姿での出発となるが,ほとんど雪のないこのあたりはブユがいっぱいで,準備中に既に数箇所くわれた。

ゲートを越えてしばらくは平坦な林道歩き。

汗を拭き吹き,新緑がまぶしいブナの大木の林を抜けて温身平へ。

温身平の分岐で左にダイグラ尾根への道を分け,右に梅花皮沢沿いに少し歩くと,正面にブナの新緑越しに残雪の豊かな梅花皮岳や烏帽子岳が大きく立ちはだかる。

9:05

温身平

こんな山容は東北ではあまり見ないね
堰堤

堰堤の端についた階段を上がると,エメラルドグリーンの堰堤の水と白い残雪と新緑の対比に思わず声が。

水量豊富な梅花皮沢の左岸をしばらく歩くこととなるが,このあたりから沢状の地形には雪渓がでてくる。てか,ほとんどデブリ。

はじめ緩やかだった地形も,徐々に深くなっていく沢のおかげで,なかなか険しい山登りとなっていく。

雪どけで中途半端に起き上がってきたヤブに背負ってるボードがぶっつかり,何度もお辞儀をしながらこれをやり過ごす。

最後尾のワタクシの前を歩いていたtoco氏,時折パタッと立ち止まる回数が増え,追突しそうになる。

左側が沢へ切れ落ちた急斜面のトラバースの細い道に入ったところで,動かなくなったtoco氏,「リタイアしていい?」

…おっと,まさかの撤退宣言。高所恐怖症の彼には,この沢沿いの道は危機感大だったようだ。

残念ながらtoco氏はここで撤退。abe君とワタクシで先に進む。

toco氏撤退地点が渓谷?のヤマだったようで,そこから4〜500mほど歩くと長かった夏道歩きは終わり,雪で埋まった沢の上に降り立った。

10:45

滝沢出合い

ところどころ割れてる箇所から覗く沢は豊富な水量で,危機感を感じるほどの迫力であるが,それを覆う雪の厚さもこれまた相当なものである。

分厚い雪と割れた沢

滝沢出合いを右に進み,すぐに梶川出合いを左に折れ,しばらく進むと沢の割れている箇所は無くなり,幅の広い雪渓歩きとなる。

正面に門内岳を見ながら長く単調なハイクアップ。

やがて入り門内沢出合いにたどり着くと,左手に深くデカイ石転び沢と北股岳の全容が。

11:20

入り門内沢出合い

ずいぶん長いこと歩いてきたが,こっからさらに標高差1000m以上か。

左に石転び沢
最後の急坂

広大な雪渓であるが,んでも,そこは深い谷の底,いたるところに岩石や土砂を伴ったデブリが。

なかなか変わらない景色の谷底をザクザクと地道に進むが,雪面はガタガタで滑りが楽しいタイプのものではなさそうだ。

左に本石転び沢が見えてきたあたりで,後方からガラゴロゴロザザーと音。後を見ていたabe君「雪崩れてますよ」。振り返ると左岸から土砂交じりの雪崩。意外と盛大な音が響き渡んのね。

北股岳が近づいてくると斜度もだいぶ上がる。

アキレス腱が伸びて徐々に直登がきつくなってくる。

abe君のアイゼン,今日はかかとに雪が団子状につくようで何度もそれを落としているが,ヒールリフターっぽくていいね(笑)

先行者のステップを利用し,長い長い急斜面をつめて行くと,徐々に斜度が緩くなり,やっと梅花皮小屋が見えてきた。長い道のりだった。

13:40

梅花皮小屋

ちょうど小屋から4人のスキーヤーが出てきて滑り始めようとしていた。

沢で吹いていた風は,尾根の上ではほとんど無くなって暑く,汗が滴り落ちる。

梅花皮岳と鞍部に梅花皮小屋,左下の点はabe君

山頂までは雪渓が切れているので,ここに板をデポ。身軽になって山頂を目指す。

…と歩き始めると体がぐらぐら前後に揺れる。今までに経験したことのない症状であるが,これだけ長い時間,板を背負って歩いたことはなかったから,急な体重の変化に足がついてこないのかもしれない。

間もなくこの症状も消えて最後の登りに精を出すが,正直,だいぶ足腰にきていて歩みは限りなくスロー。しかも山頂は梅花皮小屋から見た時の印象と違って,遠い!もちろん疲れもあるんだろうけど,遠い…。

振り返ると南に連峰最高峰の大日岳も望める。でっかい景色。

少し遅れて梅花皮小屋に達したabe君はそこでストップ。そこで待つようだ。

南に連峰最高峰大日岳

山頂直下の雪渓に上がり,最後の急斜面を登りきると,感激の登頂!360度の展望は,南東に梅花皮岳,烏帽子岳,その向こうに飯豊本山,南に大日岳,西に新潟と日本海,北に門内岳,北東に朝日連峰,その右に蔵王連峰,東に吾妻連峰。とにかく,ぐるぐる目の回る景色のでかさ!

14:10

北股岳山頂

北に門内岳

しかし時間も時間だ,手早く水分とエネルギーの補給を済ませて小屋まで下りる。abe君お待たせしました。

14:50

滑降開始

rider:abe

今までの山行では登りで100%に近い体力を使っても,滑りにはほとんど影響しないことが常であったが,今回はチト違う。気合を入れて飛び出したものの,滑りはヘロヘロ。

小屋下の急斜面は溝が掘れてタイヘン,こりゃお仕事お仕事。

斜度が緩くなってくると,左岸に新たな雪崩あと有り。雪と土砂と,木も1本転がってた。

rider:abe

ガタガタの雪面の雪渓,ここはほとんどデブリの上を滑っているようなもんなんですかね。楽しく滑るっていうより,頑張ってこなしてるって感覚のほうが強いなぁ。

15:15

入り門内沢出合い

入り門内沢出合いから見た門内岳方面は,石転び沢よりフラットでちょっと良さげに見えたけど,どうなんでせうか?

15:20

滝沢出合い

長い雪渓歩きも滑ればあっという間,滝沢出合いの先で滑降終了。

きれいな沢水で道具を洗って,再び長い夏道歩きの始まり。

著しい気温の上昇で,登りで渡ったスノーブリッジもすっかり落ちていた。

16:40

温身平

険しい夏道をモクモクと歩いて温身平に達すると,あとは平坦な林道歩き。大きな安堵感。

しかし,ここから駐車場までの林道歩きが果てしなく長く感じた。

すっかり斜陽の頃,駐車場到着は17:00。

abe君は想像よりタイヘンではなかったと言っている。こっちは想像以上だったぞ! 途中撤退のtoco氏は,長い1日を寝て過ごしたらしい…それはそれでオツカレサマ。

夏道で土だらけになった靴やポールを近くの沢で洗って撤収。

相変わらずブユがぶんぶんたかってくるので,せわしなく踊りながら片付けた。

ここの山ボードの適期はいつだろう?沢が下まで埋まっている時期に来たいが,雪崩が落ち着かないと入りにくいよね…。

次行くとしたら入り門内沢から門内岳かな。んでも日帰りはきつい山だね,泊まるべし。