早池峰山
2004.4.17
夏に下見したまま,しばらく訪れていなかった早池峰に行こうと思い立ったのは,とあるテレマーカーのビデオに感化されて。
それまでの早池峰のイメージは,小雪の北上山地にあって結構な標高があるとはいえ,どうしたって滑るほどの積雪じゃ…程度のものであったのだが,そのビデオにはでかいオープンとまばらなダケカンバの林を滑り降りるテレマーカーの姿が映し出されていた。う〜んノーマーク。
しかしながら,岳の冬季閉鎖ゲートから登山口となる河原坊までの,およそ6kmのアプローチに二の足を踏んでいた。
で,春となった今,ゲート付近の積雪ゼロの情報(大迫町役場)から,ある程度アスファルトの露出した道路を稼ぐこともできようと考え,折りたたみチャリを積んで仙台を発った。
同行者無し。
R4を花巻まで北上し,早池峰山の麓,大迫町に着いたのが7:00a.m.ちょい過ぎ。
コンビニで食料その他を買い出して,冬季閉鎖ゲートのある岳には20分ほどで到着。
果たして,到着した岳は見渡す限り雪の“ゆ”の時も見当たらん。
東方に見えるはずの早池峰山も前線の通過に伴う雲の中。雪無かったらどーする?
雲は前線通過後午前中には取れてくる見込みであったから一向に構わないんだけど,雪があんのか無いのか分からんのがイタイ。
ちょっと賭けだが,ここまで来て引き返すのもシャクだ,行ってみるべし。
岳の駐車場に車をとめて準備。
普段の装備+折りたたみチャリ。
7:45
岳出発
(518)
準備も整って勢いよく坂道をこぎ出したが,元気だったのもつかの間,あっという間に息が切れて降参,押し歩き。
7:55
冬季閉鎖ゲート
冬季閉鎖のゲートには,閉鎖期間は「〜5月24日」と記されている。
雪なんか見当たらないのに…結局雪解け待ちで除雪なんかしないってことだろうか。
チャリンコはゲート下の隙間を,人間はゲート脇の隙間から(良かったのかな?)。
しばらくはアスファルトの上り坂。
途中,左手にある笠詰野営場にもまったく雪は無し。
坂道が緩くなってきたところで再びチャリンコをこぎ出す。
自分の背中は見えないからなんとも思わないけど,はたから見たら板背負ってチャリンコこいでる姿は奇異かも?
わっせわっせとこいでいたら,唐突に路面や山肌に積雪が…。
程なく路面すべてが雪に覆われて,チャリンコはここでデポ。帰ってくるまで無事でいておくれ。
積雪は10〜20cmで,数日前のかんじきとスキーの跡が残っている。
ここから河原坊まではユルーイ坂道をザクザクとひたすら歩くのみ。
いくら歩いても変わらない風景にテンションが下がるが,山のガスはかなり上がってきたようだ。
河原坊までの道は東から西に流れる岳川の左岸,つまり北斜面についていて,積雪も20〜30cm程度になってきて悪くないんだが,目指す早池峰の斜面は,思いっきり南面。
ここからうかがえる斜面には,沢に沿って白い筋がちょろっとしか…。
9:15
うすゆき山荘前
(950)
あくせく歩いていると,やがて右手にうすゆき山荘が現れた。ずいぶん上がってきたなぁ,あと少し。
冬季に入山する場合はこの小屋に荷揚げしてから山を目指すのが良さげ。
9:45
河原坊
(1050)
もうひと頑張りで河原坊到着。やー長かった。
結局,チャリンコで稼げたのは岳から1/3程度で,残り2/3は雪道の歩きだった。
で,ここから仰ぎ見る早池峰は…愕然とするほど雪がない!
沢にほんの少〜しだけ「残ってる」ぐらいで…いや待てよ,コメガモリ沢の上部,山頂より西に下った尾根直下の東向きの斜面に,ちょっと広い面があるんじゃない!?ほうか,あいづか,あいづなんだな!んでは,行ってみっか!
長いアプローチと圧倒的な雪の少なさに風前の灯だった気力を一気に盛り返す。
アイゼンを履いて正面コースから登行開始。
積雪は40〜50cmはあろうか,締まったザラメであるが,中途半端にヤブが起き上がっていて歩きにくい上,いたるところで踏み抜く。これは体力を消耗。
コメガモリ沢の左岸を夏道どおりに上がっていくが,途中,道を見失い,何度か戻ってルートを修正した。
沢の右岸へ徒渉するポイントがなかなか見つからず…。まぁ沢はまだ結構埋まっているんだけど,すぐ下からザブザブ流れる音が聞こえるから,とても渡れない。
岩が露出しているポイントを見つけて徒渉。
11:15
1合目頭垢離
(約1300)
徐々に林もまばらになってきて,1合目の頭垢離から森林限界上へ。
うれしいのはここから上の沢がきれいに埋まっていたこと。
意外と大きな標高差の滑降になるかもと期待大。
この沢を上部オープンまでひたすらつめるのみ。滑りもそれなりに期待できそう。
ちなみに,夏道の方はガレ場で雪はまったく無し。
沢をつめて行くと,上部オープンまでこの沢の雪がつながっていることを確認できた。上の面はでかい。
1合目を過ぎると急に斜度が上がってペースもがっくり落ち,アプローチでの疲れが追い討ちをかけるのであるが,あの斜面を前にしてタダでは帰れない。
もくもくとハイクアップ,沢が広くなってきたあたりは高度もだいぶあるうえ,下から吹き上げてくる風の強さも増して…寒い。
オープンは徐々にその斜度を増してゆく。
気温は0℃あたりで雪面が硬く,ガシガシとアイゼンを雪面に蹴り込むが,直登はアキレス腱が伸び伸びでつらくなってきた。トラバースに切り替える。
やや危機感を覚える斜度と雪の硬さ。
吹き上げる風の強さと冷たさ+疲労に気力を奪われ,小休止。
振り返ると南側の薬師岳(1644.9)と同程度の高さまで来ていた。
完全防備で岩に腰を下ろし,しばらく薬師岳を眺めながらぼんやり考え込む。いや,なんにも考えてなかったかもしれない…とにかく疲れた…この辺でいいべ,撤退だ…。
ふと,風がぱったり止んだ。
何かに導かれるように上に向かって再び歩き始める。
何度も何度もトラバースを繰り返して高度を上げていくうちに斜度が緩くなり,ついに主稜線上へ。
12:40
主稜線上
(約1820)
雪はほとんどついておらず氷の世界。
北西にはうっすら岩手山も確認できる。
東に緩い稜線を辿っていくと山頂だ。
板をデポして一旦は歩き出したが,コチコチの岩場にすぐに気力を失った。撤退。余力は滑りに使うことにしよう。
相変わらずの曇り空。天候の回復が遅れてるな…。
12:55
滑降開始
板を履き,河原坊からは見えなかった東向きのでかい面に入る。
アイスバーンの状態では半端でないクレイジーな斜度。おっそろしくてこのオープンは数ターンしかできなかった。残念。
オープン下の沢まで降りてほっと一息。
13:05
オープン下
ここまで降りるとやわらかいザラメで,ひと安心。
メシなど食って休んでいたら,また風がビュンビュン吹いてきた。上でこれに吹かれなくて幸い。
風はあるが,標高をだいぶ落としたので,それほど寒くない。
エネルギー補給後,滑降再開。
ここから1合目まではきれいに埋まった沢の滑降。
快適なザラメで,ころころ転がってるウサギのフンを除けば申し分ない。
あっという間に1合目まで降り,その下の徒渉地点まで林の中を滑って終了。
13:25
徒渉地点
河原坊までの歩きは,気温の上昇とともに緩んだ雪のおかげで,登りよりも更に踏み抜いた。
13:50
河原坊
(1050)
キツイ山だった。でもまだ終わってない。
河原坊から再び板を履きポール推進。
きったない土色の雪面が推進を阻む。
途中,斜度がほとんど無くなって200〜300mは歩いた?再び斜度の出てきたところで板を履き,必死にこぎこぎ…板が走らない。
14:35
チャリンコデポ地点
足も腕もつりそうになってきた頃,チャリンコデポ地点に到着。ありがとう無事でいてくれて(涙)
ここから岳までの降りは最高の1本!
ブナやナラの林のワインディングを気持ちよくチャリンコでぶっとばす。
14:50
岳の駐車場
(518)
ゲートを越えて岳の駐車場に到着。
至福の1本でございました。
それにしても8月ごろに「どっかにいい雪ねーかな〜」と捜し求めて滑ってきた,みたいな山行でありました。
次に来る機会があれば,ハイシーズン,うすゆき山荘泊で。